2026.09.05

Training

生成AI研修の費用を助成金で押さえる。制度の中身と、見落とされがちな期限

生成AI研修を検討するとき、人材開発支援助成金の「事業展開等リスキリング支援コース」が選択肢に入る。中小企業なら経費の75%が助成される。

だがこの制度は、令和4年度から令和8年度までの期間限定で創設されたものである。つまり2027年3月末で終わることが最初から決まっている。

厚生労働省の最新資料(令和8年8月3日版)を読んで、数字と期限を整理した。

いくら戻るのか

助成は2種類ある。経費の助成と、賃金の助成である。

経費助成 中小企業75%、大企業60%。研修費用そのものにかかる。

賃金助成 中小企業は1人1時間あたり1,000円、大企業は500円。受講中も給与を支払う分の補填である。

この2つを足して「実質負担」として見せる説明をよく見かけるが、性質が違う。経費助成は研修費が戻ってくるが、賃金助成はもともと支払う人件費の一部が戻るだけである。研修費の負担がその分軽くなるわけではない。

当社は資料に実質負担を書くとき、経費助成だけで計算し、賃金助成は含めないことにしている。

上限額は訓練時間で変わる

経費助成には1人1訓練あたりの上限があり、訓練時間の区分で決まる。

中小企業の場合、10時間以上100時間未満で30万円、100時間以上200時間未満で40万円、200時間以上で50万円。大企業はそれぞれ20万円、25万円、30万円である。

そして訓練時間は10時間以上が条件である。半日の研修を一回やるだけでは届かない。

eラーニングや通信制の訓練は一律で「10時間以上100時間未満」の区分になり、上限は中小15万円・大企業10万円と別枠になる。定額制サービスは受講者1人1月あたり2万円である。

見落とされがちな、計画届の下限

ここが今回一番重要だと思う。

職業訓練実施計画届の提出期限は、令和8年8月3日版のパンフレットで「訓練開始日の6か月前から1か月前までの間」となっている。

以前の版(令和5年4月1日現在版)では「訓練開始日から起算して1か月前までに提出」という上限だけの記載だったが、最新版では下限(6か月前)も明記されている。早く出しすぎても受理されない。

支給申請は「訓練終了日の翌日から起算して2か月以内」で、資料には厳守と書かれている。

つまり、商談から訓練開始までに最低でも1か月は必要である。「来月から始めたい」という相談は、この時点で間に合わないことがある。

誰が受講できるのか

対象は申請事業主の事業所における雇用保険の被保険者である。訓練実施期間中も被保険者であることが要件になっている。

なお、「役員は対象外」と解説する記事は多いが、厚労省のパンフレット本文にそう明記した一文は見当たらなかった。雇用保険法上の被保険者の定義に、代表権や業務執行権を持つ役員が通常該当しないという、制度上の帰結である。

研修会社は申請を代行できない

これは知られていないことが多い。

社会保険労務士法第27条は、社労士でない者が他人の求めに応じ報酬を得て、行政機関に提出する申請書等の作成を業として行うことを禁じている。助成金の申請書類はこれに含まれる。

したがって、社労士資格を持たない研修会社が事業主に代わって申請書類を作成・提出するのは、原則この条文に抵触する。

厚労省の資料で訓練実施者に求められているのは、支給審査に必要な事項の確認への協力と、支給申請承諾書の提出である。申請書類そのものの作成代行とは別である。

「当社が申請まで全部やります」と言う研修会社があったら、その会社に社労士がいるのかを確かめたほうがいい

不正受給のペナルティは、研修会社にも及ぶ

厚労省の資料には、不正に関与した訓練実施機関にも事業主と同等のペナルティが科せられると明記されている。

具体的には、事業主との連帯債務、機関名の公表、そして5年間はその訓練実施者が行う訓練が助成対象にならない

さらに令和8年8月3日から公表の特例が新設され、支給決定前であっても、自主申告をしていなければ原則公表対象になった。

だから、キャッシュバックや、高額見積と差額返金や、ツール費を研修費に混ぜるといった提案は、発注する側にもリスクがある。見かけたら断ったほうがいい。

2027年4月以降は、まだ分からない

このコースは令和8年度末で終了予定である。ではその後はどうなるのか。

調べた限り、後継コースや助成率を明記した厚労省の資料は、本稿執筆時点(2026年9月)で見つからなかった。「人への投資促進コースが受け皿になる」という解説記事はあるが、公式に後継と位置づけた記述は確認できていない。

したがって、「2027年4月以降は○○%になる」と断定する提案を受けたら、根拠を聞いたほうがいい。現時点では誰も知らないはずである。

最後に

この記事の数字は、すべて厚生労働省のパンフレット(令和8年8月3日版)による。

調べて分かったことがもう一つある。賃金助成の額が、以前の960円/480円から1,000円/500円に変わっている。計画届の提出期限に下限が新設されたのも同じである。

つまり、古い記事を読むと間違える。この記事も同じで、実際に検討されるときは必ず厚労省の最新の公募要領を確かめてほしい。

支給を保証するものではなく、審査は労働局が行う。制度は変更されることがある。

STUDIO一覧に戻る

採用情報

CAREER

業務理解から実装までを一人で担当する働き方に、興味のある方を探しています。

資料請求

会社情報やサービス内容についての資料が
無料でダウンロードできます。

DOWNLOAD

お問い合わせ

お仕事のご依頼、お見積もり、ご相談は
こちらからお問い合わせください。

CONTACT