2026.09.05

Training

研修が「やった気」で終わる理由と、毎週3つの数字で防ぐ方法

研修が終わったあと、担当者の手元に何が残るか。多くの場合、それは事後アンケートである。5段階の満足度と、自由記述の感想。数字は出るが、その数字で次に何をすればいいかは決まらない。

問題は満足度が低いことではない。むしろ多くの研修で満足度は高く出る。講師の話は面白かったし、新しいツールも触った。それでも3か月後、業務は何も変わっていない。

研修の失敗は、成果が出ないことではない。出たかどうかが分からないまま終わることである。

事後アンケートでは、手遅れになってから分かる

事後アンケートには構造的な弱点が3つある。

遅い。 終わってから聞くので、分かった時点で打ち手がない。2週目に止まっていた受講者がいても、それを知るのは8週目である。

主観しかない。 「役に立った」は本人の印象であって、業務が変わったかとは別の話だ。手を動かした時間はゼロでも、話が面白ければ満足度は上がる。

誰も困らない。 高い満足度は研修会社にとって都合がよく、担当者にとっても報告しやすい。双方にとって都合がいいので、誰も精度を上げようとしない。

毎週、3つの数字を記録する

当社は研修の運営に「ストリックランドモデル」という型を使っている。中核は計測である。受講者1人につき、毎週この3つを記録する。

取り組み時間(今週/累計) 自己申告し、面談で確認する。研修外で何時間手を動かしたか。

達成率 テーマに対する到達度をトレーナーが評価する。本人の自己申告ではない。

モチベーション(5段階) 同じくトレーナーが評価する。

3つとも単純な指標である。凝ったものにしないのは、毎週続けるためだ。測るのに手間がかかる指標は、3週目で記録されなくなる。

なぜモチベーションを測るのか

3つのうち、達成率と取り組み時間は分かりやすい。分かりにくいのはモチベーションだろう。

これを入れているのは、離脱が達成率より先にモチベーションに出るからである。達成率が伸びているのに、モチベーションだけが3から2に落ちる週がある。その次の週に、取り組み時間がゼロになる。

達成率だけを見ていると、この兆候を見逃す。「進んでいるのだから大丈夫」と判断してしまう。実際には、進んでいるが気持ちが切れている状態が先に来る。

当社の運用ルールでは、数値が2週連続で下がったら、ご担当者へ個別に連絡する。研修が終わるのを待たない。

測るだけでは足りない。上司に見せる

計測と同じくらい重要なのが、報告である。数値とトレーナーの所見を、受講者の上司・研修担当者へ毎週共有する。

理由は単純で、1on1は密室になりやすく、密室の学習は途切れるからだ。トレーナーと受講者の2人だけで完結していると、忙しい週に「今週はスキップで」が始まる。一度始まると戻らない。

上司が毎週見ていると、それが起きにくい。監視のためではない。見られていることが、続ける理由になるという、それだけの話である。

週次報告書は受講者1人1行で、面談日・テーマ・累計の取り組み時間・達成率・モチベーション・所見が並ぶ。運用上の決まりが2つある。

面談をスキップした週も、行は出す。空白にはせず、理由を書く。継続性そのものが信頼になるからだ。都合の悪い週だけ報告が飛ぶと、報告全体が信用されなくなる。

所見は必ず「来週の一手」で終える。報告で完結させず、次に繋ぐ。何が起きたかだけを書くと、読んだ側は何もできない。

1人1テーマにする

計測が機能する前提として、受講者ごとにテーマが1つ決まっている必要がある。全員が同じ課題をやる研修では、取り組み時間を測っても意味が薄い。

テーマは受講者自身の業務課題から取る。研修のために用意された練習問題ではなく、本人が実際に困っている仕事を選ぶ。選び終えたら、テーマ・使うツール・確定状況を一覧で管理する。

そして最終週に、できたものを全員の前で発表して締める。作ったものが他の人に見られる前提があると、途中の週の密度が変わる。

この型は、どの研修でも使える

ここまで書いたことに、当社に固有の要素はほとんどない。エクセルが1枚あれば始められる。

それでも、2026年8月に当社が行った法人研修サービスの調査では、毎週の数値記録を標準の成果物として提供している研修は、ほとんど見つからなかった。多くは事後の満足度アンケートで終わっている。

難しいからではないだろう。測ると、うまくいっていないことが見えてしまうからだと思う。取り組み時間がゼロの週が続く受講者がいることも、達成率が上がらないテーマがあることも、記録すれば残る。

だが、それが見えることこそが価値である。停滞が翌週に見えれば、翌週に手を打てる。研修が終わってから「効果がなかった」と分かるより、はるかにましだ。

研修を発注する側の方へ。提案を受けるとき、「効果測定はどうしますか」と聞いてみてほしい。事後アンケートという答えが返ってきたら、それは終わってから分かる仕組みである。途中で分かる仕組みを持っているかどうかで、同じ金額の研修でも結果は変わる。

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