2026.09.15
Consulting
工務店の見積作成を自動化する3つの方法と、それぞれの限界

工務店の見積自動化とは、図面から数量を拾い、単価を当てて見積書に仕上げる一連の作業のうち、人が毎回繰り返している部分をソフトや外部の人に置き換えることです。方法は大きく3つあり、積算ソフトを自社で動かす、AIに数量の下書きを出させる、人が中に入って作る、に分かれます。どの方法を選んでも、いちばん時間を食う数量拾いをどう扱うかで結果が決まります。
株式会社ストリックランドは京都市の会社で、設計事務所と施工会社の中に入って見積と図面の作業を引き受けるサービス On を提供しています。この記事では、3つの型を社名を出さずに比べ、どの会社にどれが向くかを書きます。
見積が遅れる原因は単価ではなく数量拾い
見積書の作成で時間がかかるのは数量拾いです。図面を見て、壁の長さ、開口の数、仕上げの面積を一つずつ数えます。数量が揃えば、単価は原価表から機械的に当たります。
相見積もりが増えるほど重くなります。3社で競う案件では、受注は1件でも、拾うのは3件分です。断っている案件があるとすれば、多くは拾う人の手が空かないからです。単価の問題ではありません。
裏づける数字が2つあります。日本商工会議所と東京商工会議所が2024年7月に2,392社へ行った調査では、建設業の79.2%が人手不足と回答しました。ANDPAD が2025年12月に建設業の従事者2,000名へ行った民間調査では、AIを活用または試験している割合は34.8%、利用する予定はないが47.3%でした。拾う人が足りないまま、道具の導入は半分の会社で止まっています。道具を入れても、動かす人がいなければ止まります。
方法1 積算ソフトを自社で動かす
図面上で線をなぞると長さや面積が集計され、単価表と掛け合わせて見積書まで出るソフトです。国内には月額数千円から3万円程度のものが多く、リフォーム向けの版を別に用意している製品もあります。
向いているのは、拾い出しを担当する人が社内にいて、その人の作業を速くしたい会社です。担当者がいない会社では箱だけが残ります。限界は人です。ソフトを動かす人が要ります。担当者が1人なら、その人が休むと見積も止まります。ソフトが速くなっても、拾う人の数は増えません。
方法2 AIに数量の下書きを出させる
PDFや画像の図面を読み込み、部屋、開口、仕上げを自動で検出して数量表の下書きを出す仕組みです。海外には月100〜300ドル程度で使えるものが複数あり、国内には受託開発の形で各社の原価表に合わせて作り込むものがあります。
どれも完全自動ではありません。AIが数量の下書きを出し、人が確認して単価を当てる、という半自動の形が共通しています。限界は2つ。1つは、日本語の手書き注記や社内独自の記号を正しく読めるかが図面ごとに違うことです。もう1つは、受託開発型では現状の整理に数週間、開発に数か月かかり、その間も見積は人が作り続けることです。原価表が整っていない会社は、AIより先に原価表を作ることになります。
方法3 人が中に入って作る
当社の人間が図面を1枚お預かりし、数量を拾って表にしてお返しする形です。社員の方が覚えることはありません。ソフトもAIも当社側で使い、お客様には数量拾い表と、かかった手数だけが返ります。
この型の限界は枚数です。人の時間で動くので、上限があります。月に何十件も出す会社には、方法1か2が合います。もう1つは指示の通し方です。当社は準委任で仕事の単位を引き受ける形なので、日々の指示を現場の担当者から直接受ける形は取りません。当社のPMとお客様のPMを対に置き、やり取りはその間で通します。
3つの型を並べる
積算ソフト
- 数量拾いをするのは、自社の担当者
- 社員が覚えることは、ソフトの操作
- 動き出すまで、数日
- 向く会社は、拾う人がいて速くしたい会社
- 限界は、担当者が休むと止まること
AI積算
- 数量拾いをするのは、AIの下書きを確認する自社の担当者
- 社員が覚えることは、AIの出力の確認と修正
- 動き出すまで、数週間から数か月
- 向く会社は、図面の枚数が多く、原価表が整っている会社
- 限界は、図面の読み取り精度と原価表の整備
人が中に入る
- 数量拾いをするのは、当社の人間
- 社員が覚えることは、なし
- 動き出すまで、図面を送った時点から
- 向く会社は、拾う人がいない、または1人に集中している会社
- 限界は、枚数に上限があること
分かれ目は1つです。拾う人が社内にいるかどうか。いるなら方法1か2。いないなら、まず方法3で案件を回し、枚数が増えてから方法1か2に移すほうが順序として無理がありません。
外から人を借りている会社は、来月から差額が出る
積算や CAD を派遣社員に頼んでいる会社もあります。厚生労働省の「労働者派遣事業報告書」令和6年度集計によると、事務用機器操作員の派遣料金は1日8時間換算で20,297円、建築・土木・測量技術者は34,168円でした。月20日で約40万円と約68万円。外に出ている額です。
この費用を仕事の単位で引き受ける形に置き換えると、来月の損益に差額が出ます。中長期の投資の話ではありません。当社の On は準委任なので、派遣ではなく、仕事の単位で当社が引き受けます。
よくある質問
見積ソフトと AI積算の違い
見積ソフトは人が図面上で数量を指定し、集計と単価計算を自動化します。AI積算は数量の指定そのものをAIが下書きし、人が確認します。後者のほうが人の作業は減りますが、図面の読み取り精度に依存します。
AI積算を入れれば見積担当者は要らなくなるか
要りません、とは言えません。現在の製品はいずれも、AIの下書きを人が確認して単価を当てる設計です。確認する人がいない会社では、AI積算より人が中に入る型のほうが動きます。
図面が Jw_cad の JWW 形式でも数量を拾えるか
拾えます。当社は JWW を含む図面をお預かりし、数量拾い表をお返しします。紙の図面しかない場合も、データ化から引き受けます。
人が中に入る型と派遣の違い
契約が準委任で、仕事の単位で当社が引き受けます。日々の指示を現場から直接受ける形は取らず、当社PMとお客様PMの間で通します。客先常駐もしません。
助成金は使えるか
使えません。当社が作業するサービスは訓練にあたらないため、人材開発支援助成金の対象外です。社員の方が学ぶ研修は別のサービスで、そちらは対象になりえます。その場合も、支給を保証するものではなく、審査は労働局が行い、制度は変更されることがあります。賃金の助成は従業員への給与の補填なので、実質のご負担には含めません。受講できるのは雇用保険の被保険者に限られ、法人役員は通常この要件を満たしません。申請は提携の社会保険労務士が担い、当社は資料を用意しますが申請書類は作りません。
次の一歩
図面を1枚お送りいただければ、数量拾い表と、かかった手数をお返しします。設計事務所と施工会社向けのページに受け口を置いています。
参考資料
- 日本商工会議所・東京商工会議所「人手不足の状況および多様な人材の活躍等に関する調査」2024年9月5日
- ANDPAD「AIの利用に関する実態調査」建設業従事者2,000名、民間調査
- 厚生労働省「労働者派遣事業報告書の集計結果」令和6年度 表6 派遣料金
※月額の相場と製品の型は2026年9月時点の各社公開情報を当社がまとめたもので、個別製品の推奨ではありません。派遣料金は派遣先が派遣元に払う額で、消費税を含みます。

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